技術者インタビューEngineer interview

Toyota Super Drive ACモータ開発

Toyota Super Drive ACモータでハイパワーと稼働時間を両立。
持続可能な社会の実現に貢献

トヨタL&Fカンパニー R&Dセンター
SC開発部SC開発第一室
グループ長 小崎 智広

はじめに

世界トップのフォクリフトメーカである豊田自動織機製のフォークリフトには、高効率モータであるToyota Super Drive ACモータが多くの機種に採用されています。今回モータ開発グループ長である小崎さんにモータ開発の背景と当時の開発状況について聞きました。

豊田自動織機製フォークリフトにはToyota Super Drive ACモータが採用されています。高効率を特徴とした本モータを開発することになった理由は、どのようなものでしたか?

2015年に量産を開始した GENEO Ecore(3輪カウンターバランス車)の開発にあたって、稼働時間の向上:従来車比20% という非常に高い開発目標が設定されました。フォークリフトの消費電力の最も大きな割合を占めているのは電動モータであり、今回の目標である業界トップレベルの稼働時間を実現するためには、消費電力の少ない、高効率モータを開発することが非常に重要でした。

モータの開発にあたり、どのような方向性が議論されましたか?

今回のモータ開発では、圧倒的な高効率の実現が最重要な開発テーマでした。そのため、効率をあげやすい希土類永久磁石を使用した永久磁石モータもひとつの選択肢でしたが、コスト面とのバランスを重視して、今回の開発では希土類永久磁石を使用しないことを決定しました。

フォークリフト用モータということで、特に重視されていたことは何でしたか?

目指したのは単に最高効率をあげることではなく、走行モータに要求される幅広い動作点(速度・トルクポイント)での高い効率を実現することでした。また、効率向上の効果として、損失による発熱が減り、出力密度が上げられます。その結果、加速性や荷役性能もあわせて向上させることが、期待されていました。

従って、いかに高効率に設計するか、かつコストとのバランスをとって製品化するか、とてもチャレンジングな開発テーマでした。

Toyota Super Drive ACモータの開発に、苦労したことはありますか?

先ほどお話した、幅広い動作点(速度・トルクポイント)で高い効率を実現することは、とても大変な作業でした。モータコアやスロット形状を、千通りを超える組合せから選択し、大量に解析して、最適なバランスを見つけ出すことに非常に苦労しました。
実際の開発にあたっては、シミュレーションと試作品の評価結果をつきあわせて構造を決めるのですが、とても地道な作業を繰り返すことで、効率と出力密度の改善を果たしました。

今回開発したモータは、当社の自社設計フォークリフト用モータとしては第5世代の構造にあたりますが、これまで先輩達が開発してきた設計資産を活用して、世代を経ることで、広範囲の動作点で高効率を実現した、フォークリフトに最適なモータを開発することができました。

Toyota Super Drive ACモータの導入後の評価はどうでしたか?

当初からの機台の開発目標であった20%の稼働時間向上を実際に達成することができ、またその後発売されたRinova(リーチ車)では、我々の開発したモータが、経済産業省賞最優秀賞を受賞した理由のひとつになったと聞いています。
また海外では、出力密度を上げたことで、加速性能や荷役の操作性が向上したと、お客さまにも大変好評いただいています。

今後どのような開発をしていきたいですか。

電動化は間違いなく世界的に大きな潮流となっています。私としては高効率モータのラインナップを更に拡大して、世界で、特に電動化が先行しているヨーロッパの市場で、フォークリフトだけでなく、他のアプリケーションも含めて、持続可能な社会の実現に貢献していきたいです。

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